ワンピースキャリパーとツーピースキャリパー
固定キャリパーは、1つのブロック(モノブロック)または2つの別々のピースでできています。モノブロックキャリパーは単一の鋳物から作られているため、質量/流体変位比に優れ、ネジやボルトがないため形状の柔軟性もあります。また、円錐形の抜き勾配がないため、半径方向のスペースが小さくてすみます。
一方、ツーピースキャリパーは、加工に特別な工具を必要としないため、製作や組み立てが簡単です。
ブレーキキャリパーの正しい作動は、構成部品の仕上がり品質や、正しい組み立て、材料の選択など、多くの要因に左右されます。ピストンの滑らかさや、ライニングの品質、体積吸収(制動時にキャリパーの変形によって吸収されるブレーキフルードの量)も、迅速で正確なブレーキシステムのレスポンスを実現するための決定的な要素です。
ブレーキキャリパーの主要構成部品
ブレーキキャリパーは、次のような複数の部品で構成されています。
- キャリパーボディ:応力に耐えること、パッドがディスクに確実に固定されること、ピストンシートのためのスペースがあることなどの要件があります。
- シリンダー:ピストンを収容し、油圧による密閉性を提供することで、制動時にピストンがスムーズに動くようにします。
- ピストン:油圧を機械的な力に変換し、その力をパッドに直接加えます。パッドからブレーキフルードへの熱伝導を抑えるため、断熱材で作られています。また、高温でも変形せず、ブレーキフルードとの相性も考慮して設計されています。
- スライディングガイド:キャリパーボディと固定サポート間の相対移動を可能にし、制動力が均等にかかるようにします。
- シール:ブレーキフルードの密閉性を確保し、最大350 barもの圧力や-40~+200°Cの過酷な温度にさらされながらも、ブレーキ操作後にピストンが元の位置に戻るようにします(ロールバック機能)。逆方向でも同様に、ディスクの横方向の変形によってピストンが押し戻された場合には、特殊シールがピストンを正しい動作位置に戻します(ノックバック機能)。これにより、ブレーキストロークが公称値より長くなることはありません。ピストンシールは、作動中に接触するフルード(DOTブレーキフルードにはEPDM、ミネラルオイルにはHNBR)に適合していなければなりません。
- ダストカバー:汚れや湿気からピストンシリンダーを保護し、損傷や腐食を防ぎます。
- ブレーキパッドスプリング:制動後にパッドを休止位置に戻します。また、パッドをそれぞれのピストンに密着させる働きもあります。このスプリングはステンレス鋼、または防錆コーティングが施されたばね鋼でできています。
- エア抜きボルト:キャリパーから空気を抜くことでエア抜きを行います。
- 固定イヤー: ブレーキキャリパーをハブキャリアに固定する部品です。構造要件に応じて、ラジアル部品またはアキシャル部品になります。
- ラジアルホール:大径ディスクの使用を可能にし、トルクによる変形を抑え、パッドの摩耗を均一にします。
- アキシャルホール:平行なのでドリルによる穴あけが容易で、フローティングキャリパーの取り付けにも対応します。
ライン
もう一つの重要な構成部品は、ブレーキキャリパーへの供給を行うためのラインです。このラインには、ゴムと金属ブレードでできたフレキシブルなものと、金属製のリジッドパイプのものがあります。
最適なラインは、構造や性能に関する要件に応じて選択されます。例えば、高性能車のブレーキラインは、キャリパー近くのリジッドパイプセグメントと、それに続くフレキシブルホースで構成されることがあります。この構造が採用されるのは、キャリパーは発する高温からフレキシブル部分を保護するために、リジッドパイプが適切な断熱効果を発揮するからです。